住民主体に事前復興まちづくり
2021年12月11日(土曜日)ですが、午後17時半より徳島県美波町由岐地区から遠路駆け付けていただきました井若和久さん(徳島大学人と地域共創センター学術研究員)の講演会が始まりました。25人の参加者が熱心に聴講しました。
とにかくあまりに情報量が多く、しかもすべて地域での実践事例ばかり。貴重な情報です。「これぞ求めていた本物の実践事例」です。
印象に残ったキーワードを書き写すことが精一杯でした。
「地震は自然現象。
震災は社会現象。
復興は政治現象。
事前復興は政治現象?。」
と井若さんは言われました。なるほどそうかとも思います。地震や津波は自然現象。災害にするのは人間ですから。
またこうも言われました。
「災害は災害前の社会の問題をより顕在化させる・」
東日本大震災は人口減少を加速させた。
大都市と周辺都市は増加。中都市は微減。小都市は激減・
実は震災前の傾向が市のまま、より加速されました。
東日本大震災の反省点とすれば、[住民の復興感は上がっていない」「住民主体の復興計画になっていない」「思い描いた復興になっていない」「コミュ二ティや地域経済の復興が特に悪い」
ということでした。生活者の時間軸と行政の時間軸がずれているので、「必要な時に家や街並みは完成せず」「必要としなくなってから高台や盛り土の造成地が完成しても住民は戻らない」現象が被災地各地で多発しているようです。
井若さんは東日本大震災の復興まちづくりの十訓として、以下の事をまとめ言われました。
①震災時に勝負は決まっている!だから事前復興。
②絶対に死ぬな!生き残った者だけが復興に進める。
③役場を被災させるな!落城しては死期が取れない。
④コミュニュイティを維持させろ!再建は至難の業。
⑤住民が主体たれ!住むのも責任を取るのも住民。
⑥行政と協働しろ!予算をつけれるのは行政。
⑦専門家を頼れ‼うまく付き合えば役に立つ。
⑧3年目標に終わらせろ!皆が戻ってこれなくなる。
⑨一人一人を大事にしろ!復幸はともにある。
⑩総合的に考えろ!復興は防災でなくまちづくり。
徳島美波の30年後を考えると、社会リスク(人口減少、少子高齢化、過疎化)がより進行し、大規模地震や津波が発生しなくても自然消滅する危機があります。
高知県も同じ問題を抱えています。毎年高知県の人口は5000人強減少しています。10年間で5万人は減りますから。
日本はまさに「災害大国」今後30年以内におこるであろうと言う南海トラフ地震の被害想定は、死者が32万人、避難者が950万人、全壊・全焼家屋238万棟、被害額は220兆円です。
首都圏直下地震は、被害総額が95兆円とされています。また2021年12月21日に公表された政府の中央防災会議の日本海溝地震と千島海溝地震の被害額は、日本海溝が31兆円、千島海溝は16兆円となっています。
東日本大震災は、死者・行方不明者は1・8万人、避難者は38万人、被害家屋40万戸、被害額は16・9兆円でした。
火山の噴火による被害や、気候変動による豪雨災害などもあります。被害後の復興は日本国の国家予算規模を遥かに超えています。南海トラフ地震後に東北並みの復興事業を行うことは、もはや不可能です。
全国知事会からも事前復興に関わる施策も確立や財政措置の要望を出しています。
徳島県美波町の事前復興まちづくり計画は2012年からスタ^としています。考え方は以下の定義をされています。
(定義)
住民が主体になりまちのリスクを受け止め、復興を含めたまちの将来像を共有する「まつづくりプラン」(地域版総合計計画)としての事前復興の取り組み
(立案プロセス)
①住民からの発意。組織の設置。
②地域の骨格。魅力や課題などの現状整理
③地域継承・幸福の抽出と共有化(未成年も尊重)
④災害と地域継承の歴史の整理
⑤地域継承。幸福に及ぼす次の災害の影響評価
⑥地域継承。幸福のための将来像、方策の立案
とされています。
美波町由岐地区の事前復興まちづくりへの挑戦は、2012年1月からスタートされています。
2016年に美波町を訪問した時に井若さんから聞きました。その時のレポートです。)
http://futaba-bousai.cocolog-nifty.com/blog/2016/07/post-28a7.html
(ブログ記事 美波町(由岐地区)での研修会 2016年7月16日訪問)
「美波町由岐地区の南海トラフ地震での津波想定被害が公表されました。由岐地区の沿岸部の9割が浸水被害を受け継事が判明。
そのことで、若い子育て世代が家を新築する場合、津波の心配のない他地域への転出が相次ぎ、震災前過疎が心配されました。」
「2012年から住民組織.美波町・徳島大学が協力し、事前復興まちづくり計画の議論を始めた。住民組織が前へ出て動き、高台の土地の借用に何か所か成功しました。
建築士会の協力で、コンペを行い模型をつくりました。イメージを具体化しました。」
「土地を提供してくれる地主まで現れました。計画を具体化するためには、盛り土が必要です。西の地の山を切り取るのに20億円かかります。」
あとは国が事業資金を出していただけるかどうかでしょう。いただければ「住民発意の事前復興計画のモデル事業」になりますね。
講演の中でお井若さんが事前復興まちづくり計画を議論するなかで、従来交流のなかった由岐地区の3つ地区の有志が同じ議論の場で交流したのはとても重要な事でした。
議論だけではなく、コンペを実施し、模型などをこしらえると、「今までは現実味がなかったが、実現できると言う気になりました。」
行政側の意見としては「現状では制度がないが、政策として提言していきたい。公共事業の残土利用なそ実現手法を検討したい」(町長の発言)があったようです。
注目すべきは住民の参加意欲です。2015年から17年にかけておこなった「下知地区防災計画・ワードカフェ」は3年間持続しました。
下知地区減災連絡会加盟の単位自主防災会幹部は殆ど3年間毎回出席し、お意見交換を繰り返しました。常に30名の参加者がいましたから地域の資源になりました。
しかし各地域の町内の住民各位にまで浸透したかと言いますと、残念ながらそうはなっていません。由岐地区では1割の住民が意見交換会に参加したと聞きました。
下知地区の人口は1・6万人です。1割では1600人が参加していたということになるので凄いことであると思います。
また由岐地区絵は、青年会や大学生がフォトコンテストを開催したり、地域の魅力の再発見をされているようです。
「里海里山」「豊かな自然環境」「家族・3世代」「近所づきあい・コミュニュティ」「地域行事・伝統行事」「漁師町」「子供・・学校」んどをキーワードにした意見交換から今後の展開が期待できますね。
先進地区のぶち当たった問題点なども包み隠さずはなしていただきました。ただ下知地区防災計画と大きな違いは「住民参加度が全住民の1割と高率である」ということと「高台移設プランを住民や行政側に見える化した、」ことでしょう。
下知地区の課題は根深く、高知市も高知県庁も「市街地の長期浸水地区をなんとかする。という対策は0だしやる気の1かけらもない。」という厳しい現実があります。
高知市や高知県庁の「不作為」で、私は家屋も事務所も、倉庫も車も何もかも亡くし、命までなくしたくはありません!!
「東日本大震災の復興まちづくり計画の十訓」を体にたたき込み、実践して行きます。
行政側の「とりあえず防災」では、生き延びることなど海抜0メートルの下知地区では到底出来ないことを井若さんの講演を傾聴して改めて思い知らされました。
ではどうするのか。来年こそ答えを自分なりに出します。
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