頼もしい高齢者社会の先駆者
「おばあちゃんは女子大生」を読んで
町内の西森俊一さん(酒販店経営・前二葉町町内会長)から、「おばあちゃんは女子大生」(河渕日出子・著・飛鳥出版・2005年刊)をお借りました。
「頑張っている人の人生。厳しい状況でも心が折れず、勉強をしようという意欲が凄いから読んでみてください。」と言われました。「僕自身も働きながら定時制高校へ通学していた時代があるので、共感するところがありました。」
著者の川渕日出子さんは、隣町にお住まい。二葉町主催の「ロープワーク講座」や「二葉町総合防災訓練」にも参加いただきました。現在89歳で、酸素吸入しながら来られる意欲のある人です。
川渕日出子さんは、1929年生まれ。今年で90歳になります。
大阪出身で縁あって高知へ。ご主人は2人の子持ちの人。経済力がなく、働かず、威圧的で時に暴力を振るったという。ご自身のお子さんも苦労して子育てされた奮闘記は「これほど苦労された人が今どきおられたのか」と思うほど壮絶でした。
でも河淵日出子さんが凄いのは、タイトルにあるように、68歳で県立山田高校の定時制へ入学、懸命に勉強する姿でした。75歳にして進学した高知短期大学を卒業されました。幼少期は極貧で中学校もまともに行けない状態で働き詰めだったようです。
大阪で何の不自由のない生活をされていたのに、ご両親の相次ぐ逝去や,戦災で生活が暗転。高知へ嫁ぎ塗炭の苦しみの中にあっても勉学したい気持ちがあったのでしょう。
それが68歳にして定時制高校へ入学し、働きながら通学する奮闘記も記述されていました。特に高校数学に苦労され、熱心な教員の指導もあり、努力されて高得点をあげられた努力には脱帽です。習字でも国際高校選抜書展に入選するなど素晴らしいことです。
前向きな心をもっている河淵日出子さんの文章は真摯であり心に響きます。
「高校生活の幕が下りた。感無量である。
60年ぶりに体験した学校生活は未知の世界であった。厳粛に授業をうける。
知らないことの多さに驚く。またそれが楽しかった。山田高校定時制に入学して4年が過ぎた。光ファイバーより早く感じる.せめて後1年高校生活を楽しみたかった。
戦前、戦中、戦後、大阪で過ごした私の青春は学問どころではなかった。B29の爆撃に逃げまどい、家は破壊された、人は死ぬ。食料はおろか水さえ無い。泥沼どころか地獄であった。
国策とやらで10代の学生が特攻隊出多くの命を落とした。70歳を超えた私が、今有頂天になって高校生活云々と話すことは、いささか後ろめたい気さえする。多くの犠牲者は私と同年代なのだ。
しかし、私は生きている証として何かの役に立てる人間になりたい。だからこそ高校で学んだ知識を無にせず、次に生かせる努力を惜しまない。
共に巣立った級友、後々続く後輩、あなた方は私には得ることのできない素晴らしい財産を持っている。”若さ”というその財産を大切に育ててほしい。
私も与えられた命の限り学びたい。若くして心ならず逝った学生たちにためにも。」(P73「思いきりの高校生活」)
長々と引用させていただきました。この1文にこめられた河淵日出子さんの強い思いは、いわゆる「戦中派」といわれた世代に共通するものなのでしょうか。
自伝の章にあるように、厳しい生活の中で鍛えられた強靭な精神なのでしょうか。
文章も簡潔でわかりやすく、独りよがりにならず、客観的に自分を冷静に見つめておられます。あらためて敬意を払います。
著作は2005年、75歳の時に記述されたものです。
私も毎日雑務に追われています。高校生時代や大学時代は勉強もせず独りよがりな考え方にとらわれて怠惰な日々を送りました。河淵さんのように学問に対する真摯な志は皆無でした。
私も新規に始めた仕事で成果を上げ、借金を完済出来たら75歳になります。私も河淵さんを見習い、自分の学習テーマを真剣に研究し、学問的な探求をしてみたいと思いました。
この書籍をお借しいただきました西森俊一さんに感謝です。
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