復興はコンパクトな街から
日本経済新聞2018年3月11日号の1面記事には納得しました。
「東日本大震災きょう7年 復興 コンパクトな街に」「便利さにぎわい誘う力」と見出しにあります。
記事によりますと「人口が減りながら中心市街地の人口密度は震災前より上昇した自治体が複数あることが分かった。病院など生活に密着した「核」を中心部に配置し、住民を集めたのが共通点だ。」とあります。
中心市街地の人口密度は、平成10年と比較しますと、岩手県久慈市は2684人/平方キロが2702人/平方キロに、釜石市は3076人が3185人に。気仙沼市は3152人が3885人に、宮城県石巻市は3643人が3784人、多賀城市は4801人が4830人になりいずれも増加しています。
その理由として記事では「中心部をコンパクトに再建できた自治体は、いずれも「街の核」となる施設を決め、郊外から住民を呼び込んだ。気仙沼市や石巻市は大規模な市民病院を「核」に位置づけ、老朽化や震災で建て替える際に郊外ではなく中心部を選択した。」とあります。
核は公共施設でなくてもいいとのこと。釜石市はイオンのショッピングセンターを「中心部再建の有力な核に据えた」という事例もあります。
効用について記事ではこう記述しています。
「コンパクト化は行政と住民の双方に利益がある。気仙沼市は戸建て住宅が並んでいた一帯を高層住宅街に変えたことで、商業施設に適した空き地を確保した。現在は地元の農水産品を扱う観光商業施設の建設が進む。完成すれば日常的な買い物や観光集客に役立つ。」
「一部の高層住宅の1階では津波で流された小売店や飲食店が営業を始めた。中心部に住民が集まる中で、再開する店が増え、便利さが郊外から一段と人を呼ぶ好循環が生まれつつある。」
「石巻市の中心街ではマンションや戸建ての住宅の開発が相次ぐ。病院や商店街に近く、高齢者も歩いて暮らしやすい利点に気付いた住宅各社が建設している格好だ。復興住宅と合わせ、市街地の再建加速に役立っている。」
釜石市などでは震災前は「シャッター通り」に近かった中心部が、現在はイオンを中核に再建しにぎわいを徐々にとりもどしているとか。子育て世代は仮設住宅の暮らしの中で買い物にしやすさなどで中心部の便利さを実感し、沿岸部からの移住を決めた人たともいる。とのことです。
ただそうなりますと周辺部の集落の人口が減少します。石巻市の雄勝地区は地域の中心部を居住禁止地区にし、高台を整備して住居の移転を促していますが、当初の予定どうりに集落が形成されるのかわかりません。
日本経済新聞の記事での総括はこう書かれています。
「被災市街地の再建は全国の自治体の将来モデルになる。医療機関など生活密着の施設は中心部で建て替え、核の形成には企業の力も生かす。こんな取り組みを進めば人口が減るなかで中心部に住民を集め、コンパクトシティができる可能性がある。
東北復興の過程からは、そんなことが読み取れる。」とあります。
日本国全体で「少子・高齢化」が急速に進行しています。高知県では全体で毎年7000人、高知市でも1000人から2000人の人口が減少しています。未災地のの高知でも人口減が止まりません。
一方でL2クラスの大地震(東日本大震災規模)の南海トラフ地震が起きれば、。高知県は4万人が死亡し、必要とされる住宅は7.7万戸、現在用意できる住宅は2.4万戸程度と言われ5.3万戸(1世帯2人として)約10・6万人の高知県民が県内で避難生活が出来ません。
被災した市街地が直ちに復旧・復興できなければ、県外へ避難生活している県民の多くは高知県に戻る理由がなくなり、単純計算で大震災後高知県の人口は15万人一気に減少することになりますね。
そのあたり高知県や高知市当局の「危機感が薄い」ことに、危機感を感じる今日この頃です。下知地区防災計画は「事前復興まちづくり計画」を提唱していますが、地域の「弱み」を事前に適切に把握し、事前に対策することが減災に繋がるだけでなく、災害に「も」強い下知地区を事前に形成することが、高知市や高知県全体の人口減少に歯止めをかけることになると確信しました。
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