「3・11大震災私記」を読んで
「3・11大震災私記」(田村剛一・著・山田伝津館・2014年刊)を読みました。2016年12月20日に、岩手県宮古市在住の「震災語り部」である菅野和夫さんから「3・11東日本大震災 風化させないために これが巨大津波だ。」(山田伝津館)のDVDをいただき、何度も視聴した後だけに、田村剛一さんの体験記は、一読してとても重たいものでした。
私記では田村剛一さん宅は、山田町で、津波に襲わましたが、1階部が1・3メートルの浸水があり半壊で家屋は残りました。在宅避難者の厳しい生活も綴られていました。長期浸水状態が南海地震が起きれば予想される高知市下知地区。他人事とは思えません。
震災当時は救援避難物資は山田町役場にたくさんありました。支給されるのは町指定の避難所だけであり、田村さんのような在宅避難者には全く支給されませんでした。
半壊の在宅避難者には電気関係も自己負担だったそうです。
「それからが大変、一階の電気製品、ガス製品は全て新しく買い替えなければならなかった。ガスメーターも給湯器も海水をかぶり使用不能だ。それがなかなか手に入らない。仮設住宅建設が優先され、半壊家屋には廻ってこなかったからだ。」
「それだけでは済まなかった。ガスコンロ、風呂釜、便器、冷蔵庫、炊飯器、テレビ、茶箪笥、食器棚・・・・。すべて使えなかった。そうしたものの中に、支援物資として、役場に届いているものがたくさなると聞き、役場に出向いて、
「半壊家屋も被災者だ。いくらか、半壊者にも分配したらどうか」と係りに申し入れた。とことが返ってきた言葉を聞いて愕然とした。
「支援物資が欲しかったら、仮設住宅に入ってください」といわれたからだ。」
「これから自立しようとするのに、物が欲しかったら仮設住宅に入れとは何事か。」私は席をたって部屋を出た、そういわれた人は私だけではない。
役場は半壊家屋には冷たかった。同時にこんな考えでは町の復興は難しいように思えた。」(「半壊被災者の嘆き」P100)
田村さんは実体験なさっているので、書かれていることに説得力があります。この文章を読んで、南海地震の後を想像しました。うちは鉄骨3階建て。揺れと浸水でも運よく耐えられ半壊状態で残るかもしれない。でも半壊は半壊で今のままの行政システムでは大変な労苦が必要であることがあらためて理解できました。
2015年6月に訪れました宮城県石巻市沢渡地区。半壊の家に住まざるを得ない人たちの苛酷な生活を思いだしました。
http://futaba-bousai.cocolog-nifty.com/blog/2015/07/22-8d88.html
津波被害をより大きくした原因の1つに気象庁の津波警報の第1報が「予想される津波の高さは3メートルです」との発表が大きいと田村さんは言われます。
「3メートルの津波であれば堤防を超えない。海をわざわざ見に行った人たちもいました。」その人たちは実際は10メートルを超える津波がやってきたので皆犠牲になったそうです。
昨年講演に来られた宮城県石巻市の今野清喜さんも同じことを言われました。
「3メートルの津波と聞いて逃げない人が多かったです。前の年にチリからの津波の予測が3メートルと言われて実際は50センチでした。皆それを覚えていたので逃げなかった。後から気象庁は10メートルに変更しました。でもその時は停電で情報は伝わりまでした。」
http://futaba-bousai.cocolog-nifty.com/blog/2015/10/post-5f70.html
また田村さんの私記の中で、驚いたのは津波火災でした。津波に耐えた家屋から出火し、残っていた家屋に燃え移り地域全体が全焼しました。地震と津波で消防も出動できませんでので、余計恐ろしさを感じました。
その他印象に残る、ずしんとした記述が多くありました。一読しましたので、下知市民図書館に寄贈します。登録されてから後でまた借りてじっくり再読します。
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