市民目線での減災対策を考えました(第1弾)
過度に行政に依存するわけではない。また情報通信機器や平時には便利な社会インフラに依存することなく、電源を仮に長期間喪失する事態になったとしても、あわてず騒がず、明るく被災生活をし、復興・復旧計画を前向きに考えることは、地域の中でできないだろうか。
荒唐無稽な考えも散見していますが、あくまで「市民目線」で、減災対策を考えてみました。
「市民目線での減災対策(高知市下知地域)」
南海トラフ巨大地震から高知市下知地域で生きのびるために
(南海地震が起きれば高知市は1000年前の状態になるでしょう。わたしの地域も水没します。)
南海トラフ巨大地震の想定が、南海単独であろうが、3連動(南海・東南海・東海]であろうが、巨大地震(L2・東日本大震災規模)であろうが、私達の居住する高知市下知(しもじ)地区の二葉町は、地盤が沈下します。最大で約2メートル沈下すると言われています。地震・津波による被害以外に長期浸水する市街地です。いつ浸水が解消されるのかは、県当局や高知市役所から現在のところ明示されていません。
(1946年の昭和南海地震では、3か月間水没しました。)
地域に高台はなく、耐震性を満たした避難収容施設は二葉町町内に1か所しかなく、全く足りません。あいつぐ地震想定の公表で、地価は下落。地域は空き地や空き家だらけです。自分の所有する土地建物を売却し、津波や浸水の影響のない高台へ移転することは個人レベルでは実質不可能になりました。
地域には高齢者が多く、その多くは耐震性のない木造の低層住宅に居住しています。海に近く、南海地震時には揺れている最中に地域の浸水が始めるとも言われていています。命を守るために自主防災会は、賃貸マンションの所有者と「津波一時避難(退避)場所」(高知市役所の表現では「地区指定避難ビル」)を高齢者、要支援者の自宅近くに配置しています。それ以外に二葉町などの下知地域では浸水と津波から助かる方法はありません。(古いビルゆえ、高知市の認定している「津波避難ビル」にはなれない建物です。二葉町は13か所の地区指定避難ビルがあります。市役所認定の津波避難ビルは2か所しかありません。)
運よく助かったとしても問題は「その後」の支援策です。想定では高知市下知地域は全域が現在海抜が0メートルですので、最大2メートル地盤が沈下します。長期浸水状態になり、浸水は容易に解消されません。また海水に浸水した家屋は全壊状態と同じで、解体し建て替えをしないと居住できないと思います。
そうした悪条件の「生きのびることが難しい」「生活再建が極めて難しい。」高知市下知地域で、私達なりの生きのびる方策をいくつか考えました。荒唐無稽なアイデアもありますが、地域特性を考慮したものです。「上意下達式の防災対策」ではなく、市民の目線での減災対策を真摯に実行して行くことを念頭に考えました。
(今までに取り組んできたこと)
1)二葉町全世帯を対象とした「防災世帯調査」。2007年より3回実施。地域の人口動態や世帯の傾向、要支援者の把握を行いました。
http://futaba-bousai.cocolog-nifty.com/blog/2014/04/post-3e81.html
2)二葉町町民各位の自宅近くの「津波一時避難(退避)場所」であるビルの選定と所有者との協定、市指定の「津波避難ビル」の選定も行い、2007年度の11箇所空、2014年には15箇所に増加しました。(防災世帯調査の結果、高齢化が進展しているので「津波一時避難(退避)場所」を3か所増やしました。
http://futaba-bousai.cocolog-nifty.com/blog/cat50762154/index.html
二葉町防災マップは町内の全世帯に配布しました。また町内の掲示板や塀などにも貼っています。
3)仁淀川町との疎開を前提とした相互交流は、2011年4月から始まり、形を変えて継続してます。最近は仁淀川町の長者地区との交流がより親密になっています。
http://futaba-bousai.cocolog-nifty.com/blog/2013/07/post-03ae.html
4)仁淀川町との交流は「大災害時に疎開を前提として」普段の交流をしています。2014年は3月の桜の季節に訪問。4月には集落改善センター開所1周年記念祝賀会に参加しました。
http://futaba-bousai.cocolog-nifty.com/blog/2014/04/post-601a.html
6月には田植え体験に19人が参加し交流しました。
http://futaba-bousai.cocolog-nifty.com/blog/2014/06/post-ee34.html
2015年度には5月30日の仁淀川町長者での田植え体験に、二葉町関係者は9人が参加しました。11月3日の下知地区の昭和小学校で開催される地域のイベント「昭和秋の感謝祭」には長者地区のだんだん倶楽部の皆様が地元食材を持参し販売いただきます。
5)二葉町内の津波一時避難(退避)場所への避難行動と、下知コミュニティ・センター(避難収容所)との携帯トランシーバーを活用した情報伝達訓練を実施しました。(2014年8月31日実施・同日下知減災連絡会でも実施)
http://futaba-bousai.cocolog-nifty.com/blog/2014/08/post-ba99.html
6)国際信号旗の採用
免許不要の携帯式簡易トランシーバーは、伝達距離が1キロ程度。市街地では500メートルです。障害物(ビル)があれば使用不能になります。そこで船舶関係者が情報伝達手段である「国際信号旗」を使用すれば、外国の船舶関係者にも伝達できる。
避難所にV旗を掲揚すれば「本船は救助が欲しい」という意味なので、この建物に避難者がいることを宣言することが出来ます。海に近い高知市下知地域の特性を活かした情報伝達手段です。
http://futaba-bousai.cocolog-nifty.com/blog/2014/12/post-8cdf.html
国際信号旗は万国共通のルールが制定されたのが、坂本龍馬たちが活躍していた時代です。国際信号旗(こくさいしんごうき、international maritime signal flags)は、海上において船舶間での通信に利用される世界共通の旗であります。国際信号旗は1858年に英国で制定された国際通信書によって世界的に統一されています。
7)自宅マンションを避難施設・防災拠点施設へ強化する試み
下知地域内にあるサーパス知寄町1自主防災会では、一般社団法人マンションライフ継続支援協会(MALCA)の助言・指導を受けながら、マンション防災計画の策定をしようとしています。
自分たちの居住する分譲マンション自体を「津波避難施設」「防災拠点」にする構想です。周辺の下知地域住民との連携も深めています。
8)昭和小校区市民防災プロジェクト
地域の小学校である昭和小学校の父兄たちや、地域住民が協力し合いながら、市民がつくる市民のための「地震・津波への対策・一次避難場所」をつくる!というゴールに向かって、プロジェクトを立ち上げました。
関係者が地域の「まちあるき」を実施。危険個所と津波避難ビル候補を確認。地域の分譲マンション複数が、津波避難ビルとして締結しました。若い現役世代の防災への関心を高めました。
9)昭和秋の感謝祭とあそぼうさい
11月3日に地域のコミュニティをネットワークする団体である下知地域内連携協議会の主催で11月3日に昭和小学校で開催されます昭和秋の感謝祭。地域住民の交流の場で4年前から開催。
ここでは「あそぼうさい」として消防関係者による放水体験、消火体験、煙体験、起震車体験、はしご車体験もされています。今年は「防災運動会」も検討されています。
(検討している課題について)
1)「疎開保険」の検討
昨年仁淀川町側より「疎開保険」の提案がされました。1人年間1000円の会費を二葉町契約者が払う。もしもの時に宝来荘に宿泊し、空き家探しを行うことが出来る。その間宝来荘を安く利用できるなどの特典が提案されています。まだ検討協議中です。
http://futaba-bousai.cocolog-nifty.com/blog/2013/06/post-7d0a.html
2)疎開避難場所の選定について
仁淀川町の家屋を所有している知人から無償で家屋を借りています。しかし6年位住んでいないために廃屋状態に。手入れさえすれば居住は可能ですが、その費用が出ません。「みなし仮設住宅扱い」を行政側がしてくれて、支援を戴ければ、二葉町は独自に町民用の避難住宅をいくつか仁淀川町内に確保することが出来ます。
http://futaba-bousai.cocolog-nifty.com/blog/2013/07/post-b57b.html
3)災害時の傷害保険の検討
自主防災会活動は、「無保険状態です。」。訓練時に限った障害保険を掛けることはありますが、消防団員のような補償は全くありません。これでは「共助」は絵空事です。行政側は全く対応しようとしません。
現在私も所属しているNPОと保険会社とて「設計中」です。「共助」は現状では絵に描いた餅です。行政は自助・共助・公助の割合を、7対2対1と言いますが、行政の2倍も働かないといけないのに、無保険・無保証では無理な話です。
4)SOSカードの作成への試み
全世帯を対象とした「防災世帯調査」を二葉町は実施しました。町内のデータはももっています。しかし周辺の町内はまだ実施していません。それとは別に各個人が携帯カード式で「SOSカード」を下知地域の全世帯に配布したいと検討しています。「わたしは●●に障害があります。」とカードの表に表記し、裏には保険書番号や病歴・介護歴を記述し、薬手帳も携帯する方式。避難所ですぐに手が打てます。自主防災会では予算がないので、社会福祉協議会等に支援を要請しています。
5)二次避難施設の探索と検討
高知市の五台山を「二次避難場所」に検討しています。
下知地域にほど近く、五台山は湧水があり、山菜も豊富。山なのに意外に平地が多く、長期の避難場所としても有効活用できるでしょう。高知市市街地の全貌が鳥瞰できます。
また将来「防災公園」や、行政側の防災支援拠点施設としての整備も望まれる地域です。具体的には、10月25日(日曜日)に、周辺自主防災会との共同で、五台山2次避難訓練を実施する予定です。
6)ちより街テラスの津波一時避難施設
サニーグループの拠点ビルとして2015年4月に完成したちより街テラス。複合商業施設と会社業務施設であると同時に、津波一時避難施設としての機能も充実しています。
自家発電装置は10日間の事務所の電源を確保。飲料水や非常用食料の備蓄もされていて、企業防災と地域防災のモデルとなりうる津波一時避難施設(津波避難ビル)です。企業の防災対策としては素晴らしいと思います。
(構想としては大きく長期的に取り組んでいく課題)
1)高密度発泡体を活用した浮体構造物での浸水対策
南海地震発生と同時に液状化が始まり、地盤が沈下し、浸水が始まります。津波一時避難(退避)場所や、津波避難ビルは階段で垂直避難しなければならない。歩けない人たちは介助が必要。高齢化している地域ではとても難しい課題です。
元橋梁技術者である小谷鐡穂さんに「高密度発泡体を活用した浮体構造物」を考案していただきました。「高密度発泡体を活用した浮体構造物」は船ではありません。筏のようなものです。低地の被害者は水平移動で「高密度発泡体を活用した浮体構造物」が埋め込まれている公園や空き地へ急ぎます。安全に退避できます。浸水が始まれば浮き上がります。定員の制限はありません。
http://futaba-bousai.cocolog-nifty.com/blog/2013/12/post-ce44.html
2)モンゴル民族の知恵 ゲルを仮設住宅に
モンゴル民族は移動式の家屋で大草原を駆け巡っています。基礎工事などが不要なゲルは、家具一式が揃っており、雑魚寝であれば20人は収容できます。学校の校庭、公園やゴルフ場、マンションの屋上などに簡便に設置でき、簡便に現状回復ができます。モンゴルと交易している友人によれば、20組をモンゴル本国からコンテナーで運び、組み立て指導まで入れて約700万円程度とか。雑魚寝でいくと400人分の仮設住宅。家族で行くと20家族分の住居が建ちます。そういう柔軟な発想も必要です。
五台山の「二次避難所」あたりにゲルを用意し、仮設住宅として活用すればいいんです。基礎工事や大工工事も入りません。ゲルの組み立てをモンゴルの人に習えばいい。モンゴル3000年の歴史を真摯に学びましょう。
3)立体換地による下知地域の防災都市整備事業の展開
地域の合意形成が確率してから、区域を更地にして、耐震地盤をこしらえ、整備地域を10m嵩上げします。その上に耐震高層の建物を建築し、再開発します。住居と部屋を立体換地する。商業店舗や公共施設も誘致する。高知市内中心部にほど近い下知地域が安全・安心な市街地になれば、高知市の価値も上がります。
http://futaba-bousai.cocolog-nifty.com/blog/2013/05/post-55c0.html
4)住民によるまちづくり協議会の発足
下知地域の団体、グループ、個人などが集まり下知地域内連係協議会を2014年10発にこしらました。その地域内のコミュニティ組織を元にして「まちづくり協議会」を近い将来発足させ、事前の震災復興計画を検討するようにします。「立体換地」か「集団移転」かしかこの地域の復興はありえませんから。
内閣府は平成26年3月に「地区防災計画」の必要性を出しました。これは従来型の国―都道府県―市町村へ降りてくる上意下達式の一方的な防災計画ではなく、地域に居住する住民各位が地区防災計画を立案し、地域防災計画に反映させる仕組みです。わたしはこの「地区防災計画」に期待しています。
本年度は高知市・高知県を通じエントリーをしました。
平成25年度のモデル事業地区に高知市下知地区は選定されました。
5)太陽光パネルによるLED照明灯の設置
真摯な民間企業2社が資金を提供し、避難所、津波避難ビル、避難路、津波一時避難(退避)場所に設置する事業計画。先行モデルは東北3県でJS・Fundationが300灯以上立てています。
今後来るであろう南海地震対策として実施しようとしています。種々難しい問題もあり、現在行政側と折衝中です。
高知蛍プロジェクトとして、2015年4月16日から正式にスタートし、初年度である今年は70基の照明灯を建てる計画です。
ともすれば行政主導の防災・減災対策は、「悪平等主義」に取りつかれ、「とりあえず防災」になりがちで効果が上がりにくいものです。市民の目線での減災対策をいくつか実施したいと思っています。
荒唐無稽な発想もあるでしょうが、低地に住む地域全体の住民が「生きのびる」ことは簡単なことではありません。「とりあえず防災」を言い訳にする行政任せでは、命も暮らしも守れないことは確かですから。やれることを「面白く」やることをし続けたいのです。
市民の真摯な取り組みに、行政側も真摯に対話をしていただきたい。地域防災計画に居住者の意見が反映されなければならないと私は思います。高知市は南海地震は未だ来ていません。いつ発生してもおかしくない状態です。
「事前復興計画」「受援力(支援を受ける地域の力)「地区防災計画の策定」を目標に今後の地域防災活動、地域コミュニティ活動を行っていきたいと思います。
20日から23日までの東北交流意見交換会へ行った後の情報も加味されますので、また異なる提案も出てくることであると思います。
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