岡本直也氏の講演会が開催されました。
2013年11月5日、高知市下知コミュニティ・センターで、曳家職人である岡本直也さんの講演会「液状化被害の住宅修復と備え 東日本罹災地からのメッセージ」(下知減災連絡会主催)が開催されました。
岡本直也さんは、1960年生まれの現在53歳。地元高知市宝永町在住。19歳から曳家職人として父親(先代)に師事され、27歳で親方になり、曳家として活躍されておられました。
東日本大震災直後に、震災で液状化の被害が酷い千葉県浦安市に入り、家屋の沈下修正をされている姿をTV番組「バン・キシャ」が特集で取り上げていました。講演会はその沈下修正の様子を丹念に描いていました。
空のジュースの缶を床に置くとどこまでも転がる家。ドアが開いても勝手に閉まる。家が傾いているがゆえに、家人の体調まで悪くなる。岡本直也さんは丹念に傾き具合を調べ、床下に潜り、職人を指示して、ジャッキを多数(画面の家屋では60数個)家屋の床下に配置し、慎重にジァッキ・アップし沈下修正しますと、傾向いていた家屋は水平になります。
1週間の工程で、岡本直也さんの曳家の沈下修正は完了しました。後半は津波が押し寄せる岩手県石巻の様子が画面に映し出されていました。高知県で言えば。、浦戸湾湾口部や、能見湾に地形が似ていると言われました。家屋が津波にゆっくりと呑み込まれ、ゆっくりと流れている様は息をのまれました。
液状化被害の沈下修正を関東だけでなく、東北各地でされておられ、真摯な仕事ぶりは、テレビや雑誌、新聞などでも取り上げられました。でも岡本直也さんには悩みがありました。
「今はマスコミにちやほやされていましても、切れ目なく今後も仕事が継続してあるかと言えば保証の限りではない。長期の県外での仕事が続くと疲労も溜まります。雇用している2人の職人の安定雇用も大事です。
曳家の技術を取得するのには最低6年はかかります。高知も南海地震が来ることがわかっているのであれば、職人養成の社会的なしくみをつくらないと、曳家の技術(沈下修正)は継承されません。」
「全国展開している沈下修正できる曳家は、私を含め20社程度しかありません。東日本大震災直後あらわれた多数の沈下修正業者は「にわか業者」です。きちんと行政側はガイドラインをこしらえないと技術のない無責任な業者に、公金をむしりとられ、家屋の沈下修正もろくに治らない事態に依頼主も被害を受けています。
60歳を超えた現役の曳家職人はいません。わたしは53歳ですので、10年後は引退しています。今職人を6年かけて養成しないと後継者は育ちません。9年間は地域でお礼奉公していただければ、15年間は活動できますから、」
「今行われている南海地震対策は、堤防の耐震化や津波避難タワーなどハードな土木工事が主体です。それも大事なことです。でも液状化で傾いている家屋を沈下修正できる職人を高知県で継続的に養成する仕組みをつくりませんと大変なことになります。
浦安市は経済的に豊かな自治体。市民も経済的に豊かです。1軒当たり300万円の沈下修正の交付金もありました。それが隣の習志野市になると財政状態が豊かでないので、地震から2年半経過しても沈下修正されていない家屋が未だに多数あります。
高知県も市民が自力で沈下修正できる家は僅かです。多くの市民の家屋は傾いたままになるでしょう。家屋の解体工事ができる業者の技術は均一化していますが、家屋の沈下修正できる業者は数が少なく、養成をしないと南海地震後の復旧・復興ができません。それをわたしは心配しています。」
参加した40人の参加者は皆真剣に聞き入っていました。高知新聞と朝日新聞の記者とテレビ高知が取材されていました。
岡本直也さんを取材された雑誌や新聞が受付横の机に展示されていました。
11月8日は「長田復興から学ぶ 下知復興への備え」という表題で、神戸市長田区鷹取商店街振興組合理事長石井弘利氏の講演が行われます。
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