尾﨑正直知事とラジオの収録
高知シティFM放送に「ラジオでつなぐ防災フォーラム」という番組があります。いつもは橋本さんと西やん(西田政雄さん)がコンビで番組に出演されています。急遽西田さんが急用で出演できなくなり、二葉町自主防災会情報班長の西村が代役で出演いたしました。4月5日の夕方のことでした。
尾﨑正直高知県知事がゲストです。「高知県の防災政策」「ソフト面の対策」「南海トラフ特措法について」「国土強靭化法」について橋本さんが質問されました。
西村のほうからは、「県都を遷都しないとすれば低地の市街地は立体換地が必要」「地域コミュニティを維持しながらの疎開への活動の支援は?」「大人数の低地の市民を浸水からすぐに避難させる方法で浮体式メガフロートを考案しました。」「横断歩道橋を津波避難施設にできないか」を質問しました。
詳細は4月11日(木)と25日(木)午後6時からの高知シティFM(71・6MHz)を視聴ください。やりとりを一部記述してみました。
質問「高知県の防災政策についてお聞かせください。ハード面からです。」
知事「まず最優先課題が、たとえ最悪の被害想定の地震・津波が起きても県民の命を守ることが最優先です。そのために高知県内に1354か所の避難所と117か所の津波避難タワーを整備します。これらは2年以内にすべて整備する予定です。」
「1000年に1度の地震をと100年に1度の地震を分けて考えます。堤防の整備では1000年に1度の巨大地震に耐えられる堤防をつくることは無意味です。100年に1度の地震に耐えられる堤防、護岸整備を急いでいます。
両側から矢板を打ち込んで護岸を強化する工事を急いでいます。それは減災効果、県民を高い場所へ逃げる時間を稼ぐための方策です。
「減災・災害の予防が大事です。2005年の米国で起きたハリケーン。カトリーナの教訓は、連邦政府が2200億円の堤防整備を怠ったがために15兆円の被害が起き、復旧に7兆円かかりました。ですので減災は事前の対策がなにより必要です。」
質問「ソフト面の対策はどうなっていますか?なにか特徴的な施策はあるのでしょうか?」
知事「最大被害想定では県内の罹災者が一時期50万人になるとかいうデータも示されています。従来のような防災支援の体制ではどうしようもない事態になります。
けが人の治療も拠点病院へ搬送するのではなく、医療チームが罹災地へそのまま向かうような発想の転換が必要です。
とにかく8の字高速道路網整備も、災害時の緊急輸送には役立ちます。それは普段は朝宿毛で採れた魚を翌朝大阪の市場へ搬送することも可能になります。減災対策を進めることで経済対策にもなる施策や発想の転換が必要です。
質問「高台へ県都の遷都をしないのであれば、低地の市街地住民は立体換地するしかないのではないのでしょうか?
過日「知事への手紙」にて、低地の高知市街地全体を南国市の高台地域への「遷都」をすべきではないかと主張しました。お返事で知事は「400年の歴史のある現在の高知市街地を移転し、新しい市街地を高台へ建設することは時間も費用もかかるので困難です。」との回答をいただきました。
今の地域での減災・防災に全力を挙げますという回答でした。国の南海トラフ巨大地震の新想定が大々的に公表され出して以来、地域での不動産取引は激減し、地価も下落しています。
地域全域が海抜0メートル地域である下知・潮江・高須などの地域では地価の下落に歯止めがかからない状態になっています。ひととび南海地震が起きましたら地域全体が水没します。
高台への「遷都」をしないということになれば、清遠真司香南市長が主張されているように「立体換地」を低地の高知市市街地はするしかないのでしょうか。
防災特区を申請し、一気に事業化されたらいかがでしょうか?」
知事「遷都はなにもない地域に1から都市を建設するというとてつもなく時間も費用も掛かります。それゆえ、清藤香南市長が提唱されておられます「立体換地」の方法は検討する必要があると思います。
清藤市長は、県議時代にも県議会で質問されました。低地の市街地の減災対策としては有力な方法ではないかと思います。」
質問「地域の災害弱者の速やかな避難を実現するために、地中に強化発泡スチロールを埋め込み浮体式の人工地盤をつくり、足腰の弱い高齢者や乳幼児を退避させる「浮体式メガフロート(巨大地震津波対策用高強度発泡樹脂浮力体構造物)を下知住民と関係者(樹脂メーカーと土木技術者)で昨年考案しました。
津波避難ビルは階段昇降が前提です。多くの高齢者や障碍者の場合は自力で3階までの階段昇降が困難な人も多くおられます。「浮体式メガフロート(巨大地震津波対策用高強度発泡樹脂浮力体構造物)は平行移動で避難ができます。車いすも乳母車でも退避が可能です。」
知事「浮体式メガフロートの構想は初めて聞きました。良い方法ではないかと思います。避難方法は複数あればいいんです。津波避難シェルターも室戸市佐喜浜地区で建設していきます。
地域住民のみなさまとは市町村も含めて、避難方法を複数提示して、地域に適した方法をあてはめていくことをしていきたいと思っています。」
質問「国会に提出されている「南海トラフ特措法」や「国土強靭化法」についてお聞きします。この特措法や法案に高知県として期待しているところはそういうところでしょうか?
知事「南海トラフ巨大地震は、人口で46%、工業生産で60%、農業で30%の被害が想定されています。日本は立ちいかなくなります。国を挙げて事前の減災対策をしなければなりません。そのためには特措法や法整備は必要です。
ようは事前にどれだけの減災対策ができるのかで、被害を最小限にすることができます。省庁や自治体間の壁を越えた連携や取り組みをするためには、「南海トラフ特措法」や「国土強靭化法」の成立には期待しています。
質問「地域コミュニティを維持しながらの「疎開」活動への支援はできないものでしょうか?
2011年6月より二葉町自主防災会は、独自に仁淀川町住民有志との交流を推進してきました。その理由は、居住している地域が長期浸水地域となり、復興に長期間かかることが確定しているからです。
都市住民が山間部住民をふだんから経済的に支援し、絆を深め、いざというときは疎開する。年会費を支払う「疎開保険」も検討しています。
低地の都市市街地の住民の罹災地の受け入れ先の確保と、山間部地域への経済支援になる新たな取り組みです。県としての支援はできないのでしょうか?できない理由はなんでしょうか?
知事「まさに二葉町と仁淀川町の交流がきっかけになって県としても市町村交流を進めようと支援をしようとしています。市町村同士の交流だけでは、うまく行かない事例もあり、県が仲立ちして進めようとしています。
中山間部にある「集落活動センター」を活用して、沿岸部都市部の住民と、山間部との住民との交流を普段から推進し、災害時には支援することはできないかと検討しています。
「結プロジェクト推進事業費」を盛り込みました。市町村が窓口になっていますが、集落活動センターをより活用するために新しい交流事業に成長していくことを期待しています。」
質問「自然地形のいない下知地域では、高層ビルのマンションなどに地域の浸水時に一時退避するしかありません。しかしいまだに分譲マンションは津波避難ビルに承諾していただいたところはありません。
下知地域には、国道56号線と国道32号線の二葉町。宝永町、知寄町3丁目に歩道橋があります。北本町の県道にも歩道橋があります。
静岡県吉田町は町道に「横断歩道橋型避難施設」を国土交通省の支援で建設することになりました。液状化や強い揺れに耐え、800人から1000人が一度に退避できる施設です。
横断型歩道橋避難施設は、用地買収の必要性はありません。また津波避難タワーのように普段は無用の長物ではありません。普段は横断歩道としての活用されているからです。
県として国道での横断歩道橋施設の建設を国に働きかけをしていただけませか。また山が遠い潮江地区や高須地域にも新たに「横断歩道橋型避難施設」の建設が必要であると思います。県としての取り組みはどうなんでしょうか。」
知事「これは良い避難方法であると思います。普段は横断歩道橋として活用し、いざという場合は避難施設になる。実は法律も改正されまして、より活用できるようになりました。
低地の人口の多い地域への避難施設づくりには有力な方法であると思います。関係部署とも協議し、市町村とも協力していきたいと思います。」
簡単な打ち合わせでいきなり本番でしたが、齟齬もなく収録は順調でした。
番組に参加しながらのメモからの記述です。一部不正確な部分があるとは思います。できる限りやりとりを再現しました。
放送予定日は以下です。「ラジオが繋ぐ防災フォーラム」(高知シティFM・76.2MHz)
4月11日(木曜)午後6時から6時25分
4月25日(木曜)午後6時から6時25分 です。
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前略
お世話になります。
現在、「防災・減災社会の構築」を主軸に講義・講演中です。
「避難所トリアージについて」
必ず起こる南海トラフ巨大地震は、全国の死者最大32万人超に達します。この地震を前にして、大被害を免れ得ないとしたら、私たちは何にどう備えればよいのでしょうか。今回、「避難所トリアージ(フランス語で選別)」が提唱されましたが、何時、誰が、どのように行うのかという具体策が示されていません。そもそも実現性自体が疑わしい。仮に自治体に運用を委ねても、庁舎や職員に大きな被害が出て機能不全に陥ったときはどうするのか。それでも避難所の混乱を回避するためには、在宅避難のほか空き家・空き室の制度的活用という選択肢がありますが、その場合は食料・水や衛生用品などの備えが必要です。最終報告は1週間以上持ちこたえる家庭備蓄を求めています。しかし、これも掛け声倒れでは困ります。1週間の備蓄といっても、一般市民にはまだ切迫感がないのが実情です。あらかじめ用意する救援物資と考えれば、無償配布や公費による購入補助も今後検討されていいのではないでしょうか。
最終報告はすべてを「公助」には頼れない、と読み取れます。これからの減災対策は、ハード面だけではなく、ソフト面のレジリエンス(resilience=復元力、回復力)が必要です。それは「被災した生活のリズムを、集団としていち早く取戻す能力」です。従来型の「三助の法則:自助7・共助2・公助1」は、「公助」の言訳、「共助」の自己満足、「自助」の無策でした。しかし「公助」が「自助」を支えることにもつながるはずです。災害対策は、ハードだけの公助であってはなりません。防災学習や防災を担う人材の育成に力を入れることも大切であり、こうした部分にこそ自助を育てる公助が必要ではないでしょうか。
減災社会の構築(build a society mitigation)は、机上の空論(原理・原則)に終始せず、「百閒は一見に如かず」を再生させ、予想と実践と交互に繰り返して、その都度予想の間違いを修正しながら整合性のある理解を積み重ねて、過去の教訓を学び最新の知見等を踏まえて、防災リテラシー(災害から生命・財産を護る対策)を具体化(見える化)することです。関東大震災の「不意の地震に不断の用意」の標語は、巨大地震から90年経つ現在も色あせていません。
私は自戒し日々研鑽を重ねより一層鋭意努めて参ります。ご指導ご鞭撻賜りますようお願い申し上げます。 尾下拝
防災危機管理研究所(所長:尾下義男)
投稿: 尾下義男 | 2013年6月16日 (日) 19時13分